キラキラ【完】
ガチャッーー
「た、ただいま」
そう言うとリビングから騒がしい音を立てて、お母さんが出てきた。
「ちょっと莉子、早退したって先生から連絡あったけど、どこにいたの?!」
ああ、頭がぐちゃぐちゃだ。
「…ご、ごめん、ちょっと、」
倒れて、推しの家にいたなんて言えない。
「ちょっとってどこよ。」
「…なんでもいいじゃん。」
もう脳がキャパオーバーなの。
これ以上何も考えられないよ。
「なんでもいいって…。あんたいつからそんなパーカー持ってたの?」
「パーカー?」
「今着てるじゃない。」
「へ?」
お母さんの言葉に自分の服装を確認する。
見たことのないグレーのパーカー。
…これもしかして、しゅんくんの?
自分の部屋に戻ってまじまじとパーカーを見る。
…もしかしたらさっきの出来事は本当に私の妄想かもしれないと思ってたけど、このパーカーが現実であったことを知らせる。
どうしよう。
オタクとして、いや、白木莉子としての人生の運を使い果たしてしまった気がする。
「…でも、かっこよかったなぁ」
1秒くらいしか見れてないけど、思い出してニヤついてしまう。
自分の部屋を見渡せば、壁にはしゅんくんのポスター、鞄にはグッズのキーホルダー。コンサートに行った時の銀テ。
私の生活はしゅんくん一色なんだ。