キラキラ【完】



「あ、莉子ちゃん。今日は本当にありがとうね。」



「佐伯さん。今日はよろしくお願いします」



メイク室に向かう途中の廊下、さっきまでスタジオにはいなかった佐伯さんに声をかけられる。



「いやー、莉子ちゃん相手だと、瞬がいい顔するんだよ。」


それはもうにやにやと笑いながら、とてと幸せそうな佐伯さん。


本当に写真を撮るのが好きなんだろうな。



「…そうなんですか?」



「うん、恋してる苦しさとか優しさとか嬉しさとか全ての表情が出て、とてもいい写真になるんだ。今まで撮ってきた表情とは、全く違う。」


正直素人目ではそこまで大きな変化はわからない。




「そうですかね。」




「莉子ちゃんのこと好きなのかもね。瞬、莉子ちゃんにだけ目の温度が高いからね。」 


目の温度なんて、あるのかな。


あまり感じたことがないかもしれない。




「え!?そんなわけ。」



意味のわからない佐伯さんの発言に、声が裏返る。


そんなわけないのに。



「わっかんないよー。さあメイク行っておいで。」



そう言って佐伯さんはスタジオの奥に消えていった。


やっぱり突拍子のないところとか、佐伯さんとけんけんはどこか似ている。

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