キラキラ【完】
それからしばらく、芸能界に入ってから初めて風邪をひいた。
そんな日に限って、メンバーやマネージャーさんは大忙しの日で、何か買ってきてもらえる状況じゃなかった。
自分で何か作る体力もなく、ただベットで寝ているだけだった。
オートロックのインターフォンがなり、予想外の人物が立っていたことに驚いた。
誰がこんなこと頼んだのかは、すぐに予想がついた。
はぁ、見舞いに来てくれるのは嬉しいけど莉子にもし風邪が移ったらどうするんだよ。
そんなことを考えていると、態度に苛立ちが出ていたのか、莉子が勘違いをして涙目で謝ってきた。
また胸が鳴った。
涙に弱いのかもしれない。
莉子の作ってくれたお粥はとてもおいしかった。
美味しいと感想を述べる俺の姿を見て、莉子が笑った。
俺に向かって初めて笑顔を見せてくれた。
いつも笑顔じゃない理由を聞くと、俺のファンだからずっと緊張しているらしい。
なんだ、そんな理由か心の底から安心した。
莉子の笑顔は周りを明るくする太陽みたいな笑顔で、そのままずっと見ていたかった。
そのまま市販の薬を飲んで、目覚めると莉子はもういなかった。残されたメモに書いてあった通り、大量のゼリーとスポーツドリンクが冷蔵庫に詰め込まれていた。
こんなに食べれないと一人で笑みをこぼした。