キラキラ【完】
「この5年間アイドルとして無我夢中で走り抜けてきた。失うものも多かったけど、この仕事のためなら何も怖くなかった。
でも、初めて莉子だけは失うのが怖かった。」
縋るような消えそうな声。
本気でそう言ってくれている。
凝り固まった心が解けていく。
「しゅ、く、」
胸の鼓動に耐えきれなくなって、つい呼んでしまった名前。
好きという感情に歯止めが効かなくなっていく。
「だから、もう離したくない。」
一歩近づいてきた彼から、漂うのはいつものホワイトムスクの香り。
私こんなにもしゅんくんにドキドキしてる。
真っ直ぐな言葉は私の胸に突き刺さる。
他の人には絶対になることのない鼓動の速さ。
「でもこんなの、しゅんくんに迷惑かけちゃう」
しゅんくんはアイドルで、周りにもっといい人がいるのに。
私と一緒にいると迷惑かけちゃう。
それに他の人にバレたら、しゅんくんの人生を狂わせてしまう。
「俺は莉子といれるだけでいい、何かあった時は俺が守る。だから側にいたい。」
誰もいない廊下、着ぐるみうさぎの声だけが響く。
ああ、もう。
どうしてこんなに。