イノセント*ハレーション
色のない世界を歩いてた。

音のない世界を歩いていた。

行き場のないほどにまで溢れた感情は全て諦めに変わった。

そんな感情ならいらないって聖なる夜に投げ捨てた。

バカだった。

浅はかだった。

愚かだった。

紅野さんの言う通りだ。

あたしはずっと間違ってるんだ。

迷路の行き止まりに当たってばかりいるのは、あたしの選択が間違いだらけだからなんだ。

だから、その先に行けないんだ。

前に進めないんだ。

あぁ、あたしこれからどうすればいい。

何を励みに、

何を望みに、

頑張ればいい。

...分かんない。

また、分かんないや。


「あはは...あはは...あはははは」


笑い飛ばそうとしてもうまく笑えない。

そもそも笑えるほどの十分な酸素が今のあたしの肺にはない。

氷の刃のような言葉に心が凍てつき、

時折びゅーっと吹く風に呼吸を妨げられ、

聖なる夜を飾る粉雪が降って一層冷え込み、肺を凍らせてしまった。

あたしにはもう...何の気力もない。

どこにも光は見えない。

色鮮やかな電飾で彩られているはずのクリスマスツリーを見てもモノクロにしか見えない。

一応写真をと思ってスマホを構えてみても良い構図が浮かばない。

震える指先で押したボタンによって選ばれた刹那は見事に手ブレしていた。


何をやってもダメな日もある。

人生そんなことの連続だって、母だったか、祖母だったか、昔言ってた。


けど、けど、さ...。


「これはない、よ...」


唇をどれだけ噛み締めても涙は止められない。

それどころか、1度決壊すると止めどなく溢れてくる。

そして、口の中は鉄の味がする。

あぁ...ほんと、気持ち悪い。

あたし、何してんだろ。


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