イノセント*ハレーション
あっという間に花火は枯れて、人々が帰りの電車を気にして足早に去っていく。

あたしはそんな人々に逆らうようにその場に立ち続け、月を眺めた。

夜を照らす月のように、

優しく眩しい。

太陽に向かい咲くヒマワリに焦がれていた月は、今もきっと、明日の朝花開けるように照らしているんだろう。


「帰るか...」


あたしは回れ右をし、カタカタと下駄を慣らし始めた。

下駄の音と共に記憶の蓋がカタカタと動く。

記憶が、想いが...溢れる。

あたしは3年前、17になったばかりの自分が胸に誓ったことを思い出した。

これからの人生を後悔なく生きるため、

自分の心の動き、

自分の気持ちや想い、

全てから目を反らさず、

感じたままに生きようって。

欲しいものは欲しいと願うことを恥ずかしがらず、手をぐーっと伸ばして掴みにいく。


そう決めたのに、

逃げてばかりで

諦めてばかりで

前に進めてない。

どうしたら、

どうすれば、

進める?


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