イノセント*ハレーション
「雨谷に会いたかったから」

「な、ぜ?」


あたしの疑問符を払うかのように、彼は一切曇りのない表情で話し出す。


「出逢った時から、俺にとって雨谷は他の人とは違ってた。

話さなくても分かってくれる、何を言っても受け止めてくれる。それが雨谷だった。

違うイコール特別だって感じるまで時間がかかったのは、日葵がいたから。日葵は俺にとって目が離せない存在で、イコール大切な人だって、そう思って、好きだって告白した。付き合った。一緒に色んなところに行った。

けど、俺の頭の片隅にはいつも雨谷がいた。
滅多に笑わないし、人前で絶対泣かないし、何考えてるのか分かんない。
けど...いや、だからこそ、気になって仕方がなかった。

本当はずっと言いたかった。このどうしようもない気持ちを雨谷にぶつけたかった。雨谷ならきっと分かってくれるって、受け止めてくれるって、そう...思ったから。
だから、今、俺は...伝える。雨谷に俺の気持ち、聞いてほしい」


弓木澪夜は震えるあたしの手を優しく握ると、まるで月の城へ導くようにあたしを胸の中へ誘った。

ひゅーっと夜風が髪を靡かせる。

少しばかり日焼けした肌に柔く溶ける。

あたしの胸をじりっと焦がす。


「雨谷のことをもっと知りたい。全部受け止める。今度は俺が雨谷の弱いとこもカッコ悪いとこも全部全部抱き締める。なぜなら、俺は...」


腕にかかる力が一層強くなる。

ますます呼吸が苦しくなる。

あたしが息を吸えずにいる間に、彼は言葉にした。


「雨谷凪夏が...好きだから」


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