イノセント*ハレーション
あたしは教室に居場所がなかったからここに来たと堂々と宣言した。
日葵が皆に囲まれて嬉しそうに湧水くんのことを話している、と言うと明らかに不機嫌になったのでそれ以上は言わないでおとなしく教室に戻った。
ホームルーム開始3分前。
おおよその人が自分の席に着き、これから回収されるであろう夏休みの宿題を机の上に準備している。
ごく稀に、まだペンを一生懸命走らせている人もいるけれど、大半が落ち着いていた。
あたしは、日葵の横を通って「おはよう」と声をかけ、床に付けられた赤いテープから大幅にずれた机を戻してから着席した。
「ったく、すごいずれてるな」
あたしの隣の彼もボソリと本音を溢しながらも律儀に直して腰を下ろす。
そして、遂にその時がやって来た。
ーーガラガラガラ...。
夏休み中にベリーショートヘアにした担任の大橋先生が教壇に立つ。
「皆さん、おはようございます。え~、既に噂になっていて知っている人もいるかもしれませんが、改めて紹介します。うちのクラスに転校生が入ります。じゃあ...どうぞ」
大橋先生に促され、パタパタと上履きを鳴らしながら、背筋をぴんっと伸ばし、余裕の笑みを浮かべ、彼は中央まで歩いてきた。
自分の目の前にいるクラスメート一人一人を把握するようにじっくりと眺めた後、彼はまるで国民に演説をする王子様のような圧倒的オーラを放ちながら言葉を紡いだ。
「本日からこちらでお世話になります、湧水真昼です。アメリカ帰りなので英語は得意ですが、国語と日本語にはあまり自信がありません。おかしなことを言ったらどんどん注意して下さい。こんな僕ですが、これからよろしくお願い致します」
日本語に自信がないというわりには丁寧な挨拶をして、がっつりと女子のハートを掴み、男子達にも強烈な印象をつけた彼は、登校初日からクラスの中心人物になったのだった。
日葵が皆に囲まれて嬉しそうに湧水くんのことを話している、と言うと明らかに不機嫌になったのでそれ以上は言わないでおとなしく教室に戻った。
ホームルーム開始3分前。
おおよその人が自分の席に着き、これから回収されるであろう夏休みの宿題を机の上に準備している。
ごく稀に、まだペンを一生懸命走らせている人もいるけれど、大半が落ち着いていた。
あたしは、日葵の横を通って「おはよう」と声をかけ、床に付けられた赤いテープから大幅にずれた机を戻してから着席した。
「ったく、すごいずれてるな」
あたしの隣の彼もボソリと本音を溢しながらも律儀に直して腰を下ろす。
そして、遂にその時がやって来た。
ーーガラガラガラ...。
夏休み中にベリーショートヘアにした担任の大橋先生が教壇に立つ。
「皆さん、おはようございます。え~、既に噂になっていて知っている人もいるかもしれませんが、改めて紹介します。うちのクラスに転校生が入ります。じゃあ...どうぞ」
大橋先生に促され、パタパタと上履きを鳴らしながら、背筋をぴんっと伸ばし、余裕の笑みを浮かべ、彼は中央まで歩いてきた。
自分の目の前にいるクラスメート一人一人を把握するようにじっくりと眺めた後、彼はまるで国民に演説をする王子様のような圧倒的オーラを放ちながら言葉を紡いだ。
「本日からこちらでお世話になります、湧水真昼です。アメリカ帰りなので英語は得意ですが、国語と日本語にはあまり自信がありません。おかしなことを言ったらどんどん注意して下さい。こんな僕ですが、これからよろしくお願い致します」
日本語に自信がないというわりには丁寧な挨拶をして、がっつりと女子のハートを掴み、男子達にも強烈な印象をつけた彼は、登校初日からクラスの中心人物になったのだった。