イノセント*ハレーション
当日の天気予報は前日まで曇りに傘マークがついていた。

なのになぜか、朝目が覚めるとカーテンの隙間から太陽の光が漏れ、寝ぼけ眼でずるずるとカーテンを開けるとお天道様がこちらをギラギラと覗いてきた。

体育祭楽しんでね、と言わんばかりの晴天に、体育祭というか学校行事全般が苦手なあたしは、はぁっとため息を付いてしまった。

しかも、連日の猛練習で体力を消耗しきって、なんとか気力だけで学校に向かう。

その気力の源は"体育祭が楽しみ"という気持ちではなくて、"ここで休んだら皆勤賞が取れなくなる"という意地である。

学校に行ってもいるかいないか分かんないようなやつだから、皆気づいていないと思うけど、一応高校に入ってからは無遅刻無欠席を続けている。

だから、体育祭が嫌だからという理由でこの偉業達成を諦めるわけには行かないのだ。

ということで、あたしは多少の目眩や全身の重だるさを駅前のコンビニで買ったエナジードリンクで凌ぎ、学校にやって来た。

教室の扉を開けるや否や、あたしの疲弊しきった身体に重みが加わった。


「な~ちゃんっ!」

「お、おはよ。どうした?」

「な~ちゃんからパワーもらおうと思って。今日は一段と頑張んなきゃだから」

「あぁ、うん」


としか答えようがない。

残り僅かのエネルギーを分け与えるほどあたしも優しい人間ではないのだけれど、日葵に言われたら微力ながらも渡すしかないではないか。

あたしは日葵が笑顔で女子達の輪の中に飛び込んで行くまでずっと棒立ちで、宿木にされるがままエネルギーを渡していた。

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