イノセント*ハレーション
ようやく自分の席までたどり着いたというのに、今度はクラス内でも話題のイケメン三銃士が揃いも揃って着席したてのあたしを見てくるので、あたしはぺこっと頭を下げた。

それで終わるわけがない。

太陽や月や王子様とは関わりたくない、影のようなあたしにお構い無しに彼らは話しかけてくる。


「おはよ~凪夏ちゃん!」


まずは太陽のお出ましだ。

太陽...戸塚くんとは男女混合大縄でお世話になる。

体力のある男が回した方がいいと彼は自ら第一線を退き、回し手に回った。

男子コンビが回すようになってからすごく良い感じで、跳ぶ側としても安心して跳べるようになって、チームは波に乗りつつある。


「今日は戸塚くんに着いて行くんで」

「え~、何々~?おれのこと尊敬してくれちゃってる感じぃ?」

「結果残したいんでしょ?なら、的確なアドバイスで皆を導いてきた戸塚くんに着いて行くよ。それが最善ルート」

「いや~、凪夏ちゃんからそんな風に思われてたなんてな~。なんか嬉しいっ!やる気出てきた!おれ、頑張るわ」


...大縄も恋も。

と、あたしは心の中で付け足した。

案の定、戸塚くんは鶴乃さんが1人になる瞬間を目撃すると、びゅーんと飛んでいった。

それを見て微睡みの表情の王子様が話し出す。


「朝登は元気だねぇ。僕朝は苦手だから、最初の種目が11時で良かったよ。確かサッカー...だよね、澪夜?」

「あぁ」


幼なじみの帰還により心穏やかでない弓木くんは、ずっと遠くのヒマワリを見つめている。

夏は終わっても彼の心に1年中咲いている花は、いつ見たって眩しい。

その眩しさを感じる度に思う。

可哀想だから影を照らしてあげようって思ってくれたのかなって。

光を感じれば感じるほど、影が濃くなるとも知らずに...。


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