イノセント*ハレーション
「...や。おい、雨谷」

「ほぇ?」

「何ぼけっとしてるんだよ?」

「はは。ちょっと寝不足」


ちょっとどころではない、かなり、だ。

それに今、考えてはいけないこと、考えてた。

優しくしてもらってるのに、

仲良くしてもらってるのに、

そんな風に考えてはいけない。

あたしのわがままだ。


「あれ?湧水くんは?」


あたしがそう言うと、弓木くんは人差し指でその場所を教えた。

いつの間にか日葵、鶴乃さん、戸塚くん、そして湧水くんが合流していた。


「眩し」

「え?」

「君も行ってきたら?別にあたしの相手しなくていいよ。あたし、パワーあげること出来ないし。いや、そもそもあげる気もない」

「俺は行かない。それに、雨谷からパワーもらおうとも何とも思ってない。俺は俺の意思でここにいる」


なんとなく、よりは確かに、あたしには弓木くんの気持ちが分かった。

おそらく...。

言葉にするには少しのためらいがある。

さすがに言ってしまっては関係性に亀裂が入りそうで、ここまで彼らが積み重ねてきたものを、あたしの一言で壊してしまうのではないか、なんて柄でもないことを思った。

少しの沈黙の後、やはりあたしは言おうと思った。

あたしと弓木澪夜の間に遠慮は要らないことを思い出したのだ。

言いたいことを言い合える相手。

それが、彼なのだから。

あたしは...口を開いた。


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