イノセント*ハレーション
「湧水くんてさ、日葵のこと好きなわけ?」

「ずっと2人は仲が良い。俺にとって2人は太陽だ。眩しいって言う雨谷の気持ちも分からなくもない」

「あたしから見れば弓木くんも十分キラキラしてる。太陽じゃなくて月。夜空を優しく照らす月。なんかずっとそんなイメージ」

「へぇ」


あたしが思ったままに言うと、彼はサラサラの髪に手をやった。

もしかして照れてるのかもと思いもしなくもなくもなかったけど、あたしの言葉にそんな力があるわけないと思い直した。

影響力がないからこそ、言いたいことをじゃんじゃん言える。

まるで花に如雨露で水をやるように、あたしは話を続ける。


「ずっとこのままでいいわけ?」

「良くは...ない。だから、俺なりにこの2日間でなんとか頑張ろうと思う」

「そ。なら、せいぜい頑張って」


日葵と弓木くんは、あたしの推し、なんだから。

あたしの憧れなんだから。

美しい物語を紡いで最後はハッピーエンドを迎えられるように頑張ってもらわないと。

あたしは2人のキョリが1ミリでも縮まることを祈り、クラスの中心メンバーがクラス費で買ったという青いリストバンドを身につけ開会式の開始を待った。

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