本当は
 それは、
 1通の手紙から始まった。

 宛名が、央さんの名前の横に奥様と記名してあった。
 差出人は、全く覚えがない男性の名前だった。

 気味が悪く、開封するのもひどく躊躇われた。
 開けない方がいいのではなかろうか?
 身内に相談して、立ち会いの元に開ける?
 全てが胡散臭く、2、3日考えてしまった。
 中身がひどいものだったら、警察に行けばいいし、、、と、意を決して開封した。

 『あなたのご主人は、私の妻と不倫関係にあります。』

 この一文から始まった手紙に、当たり前のことだが、私は衝撃を受けた。
 奥さんと央さんの不倫関係の始まりから今日まで、詳しく書かれていた。
ついては、彼の奥さんが央さんのマンションに行く日に乗り込んで、動かぬ証拠を掴みたいと。
 つまり、同じ不倫をされている伴侶同士として、怒りを共有して、二人に鉄槌を下そうではないかと、いう内容だった。
 私が央さんのマンションの鍵を持っていることが前提の上での、話だった。

 三年前に央さんは転勤となり、仕事もあり、その上妊娠をしたばかりの私のため、央さんは、単身赴任を選択した。
 私は着いて行ってもよかったのだけど、見合い結婚二年目で、まだ自分の思いと央さんの思いの擦り合わせが、よくできていなかったこともあり、単身での赴任を選択した彼に従う方が良いだろう、と考えた末のことだった。
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