本当は

美郁の手紙

 央さん。

 寿命を限られてしまいました。
 人間いつかは、こうなるとわかっていましたが、まだまだ、拡も小さく、叔父も最愛の人を亡くしたばかりで、それを思うと、本当はまだまだ生きたいです。

 私たちの道は、とうに別れてしまったのに、名残惜しげにあなたに手紙を、書いている自分に呆れています。
 しかも、私が離婚を選んだのに。
 
 あなたも、離婚しかないと思いましたか。どうだったのでしょうか。
 私と、また、一からやり直したいとは思わなかったのでしょうか。

 実際のところ、私はマンションに行ってあなたとあの人を見ても、私の妊娠中に不倫をしたと聞いても、どこか、離婚の2文字が思い浮かばなかったのです。
  
 遊びで付き合っているのだから、というような諦めに似た気持ちではなく、あなたの初印象’どこか拗ねている’あなたに、あの人への愛情の欠片も見出せなかったからでしょうか。

 けど
 あの人の一言で、私は、あなたと別れようと決めました。

 「身体が軋むようなセックス」

 を、彼女は央さんと身体を重ねるたびにしたと。
 そのことが、彼女の央さんへの執着となったと。

 「身体が軋むようなセックス」

 呪いの言葉でした。
 私はあなたと初めて満たされる愛を感じました。
 でも
それは穏やかな波で、軋むようなものではありませんでした。

 央さんは私と満たされないものを、彼女と共有していたのかと、思ったら、もうダメでした。
 あなたを見るたびに、その腕が、身体が、脚が、唇が、身体中を軋ませるように彼女の上を彷徨ったのかと、思うと、、、

 こんなことを書くと、いかにセックスに飢えているのかと、思われるかもしれませんが、そうではなく、そうではなく、、、

 あなたを愛していました。


fin.
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