本当は
 私はあの押しかけ以来、央さんのところへ、行きづらくなっていた。
 別に央さんが来るな、と言っている訳でもなかったが、私が行っても喜ばれていないような気がしたのだ。
 そうこうしているうちに、子供も生まれ、それどころではないという状態になった。

 もちろん、見事なるワンオペ。
と自虐的に言ってはみるが、実際は央さんの妹の礼(あや)ちゃんや、私の親とも言える叔父夫婦に大いに助けられて、育児をしていた。
 
 央さんは自分の子供が可愛くないのだろうか。
 あまり、会いたいとも言わないし、子供に会いたくて帰って来る、ということもなかった。
 この時から、少しずつ彼の歪んだ性格に気づくことになる。
気づいたところで、礼ちゃんに尋ねることもできずに、私たち夫婦は大事なことをおなざりにして、親になってしまったようだった。

 いろいろと悩みながらも、央さんに面と向かって尋ねることもせずに、あっという間に、息子拡(ひろむ)も初誕生、2歳の誕生日を迎え、たくさんのことに興味を示し始めてきた。

 央さんの単身赴任も続いている。私が動かないと、息子に央さんが父親だと認識してもらえないのではないかと、一人やきもきしている時の出来事だった。
 
 あの手紙が舞い込んだのは。
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