心はあなたを探してた
私の仕事は、総務課経理係。自分の担当する部署から届く領収書と依頼書、請求書と伝票をチェックして支払いや立替払いの処理に間違いがないかを係長以下5人で分担処理している。

本当は大学での研究分野に近い企画開発部希望だったのに、なぜか経理としての担当が企画開発部と工場となり、出張の旅費や材料、機械修繕と毎日様々な費目の書類が届く。

中には会社で支払うべきものか?確認が必要なものや書類不備で処理が出来ないものもあり、そのチェックに手間取り、毎日残業をしているのだ。

最初の頃、前の席に座る3年先輩の加賀美さんのように書類が片付ききらなくても定時になったからとさっさと帰ろうとしたら、隣席に座る主任久川恭輔に怒られた。

『その日に来た書類を全てチェックし終わるまで帰るな。』と。

実際、私自身が慣れていない上に、工場からは書類に慣れていない社員が作成したものが上がってくるため不備や却下申請も多い。

私がチェックした後、主任がざっと確認して大丈夫なものだけ係長、総務課長に決裁を回すという流れになっているから、主任は自分の担当分を片付けてから残業で私の書類をチェックすることになり、そこでダメ出しされたものを更に残ってやり直す…

「そりゃ、残業が当たり前になるわよね。」

誰に告げるでもなくひとりごちる。

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