心はあなたを探してた
「里帆ちゃん、そろそろ仕事帰りに合コン行けそうな感じ?」

社食で香織ちゃんと飛鳥ちゃんとランチをしていると聞かれる。

「うーん。もうちょっとかなぁ。主任にダメ出しされなきゃ、時間内に書類を片付けられるようになって来たから。」

「さすがだね。私なら仕事辞めてるかも。」

「ねぇ、里帆ちゃんと王子って残業している時にどんな話しているの?」

香織ちゃんに聞かれ、首を傾げる。

そういえば、残業中に書類の内容の事か「ほれ、おにぎりだ」とか必要最低限しか話さないし、帰り道は、ただ横を歩いているだけで、なーんの会話もない。

「うん…必要最低限の仕事の話だけだね。どこが間違っているとか、ちゃんと確認しろとか。」

「氷結王子って誰に対しても変わらないんだね。里帆ちゃんと一緒にいる事多いから、違う一面を知っているかと思っていたよ。」

「うん。安定の氷結王子だね。」

2人は、なんか納得してくれていたので、説明が難しい部分で優しいところもある事は、なぜか言いたくなくて黙っていた。

よく夕食のコンビニ弁当を買いに行くついでに私用のおにぎりを買って来てくれるとか、帰りにアパート前まで送ってくれるとか。

仕事には、厳しいけれど気遣いができる人なんだよね。

「早く独り立ちできるといいね。」

「そうだよ。里帆ちゃん。」

あれだけ早く独り立ちしたいと思っていたのに、もう少しで主任と一緒に過ごす時間がなくなり、送ってもらえなくなると思うとずっとこのまま独り立ちできなくてもいいかなと考えている自分に気付き、2人の前で曖昧に笑うことしか出来なかった。
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