大切なあなた
「影近、私たちはもうあの頃の二人じゃないでしょ」
あの後、影近はお金持ちの社長令嬢と結婚した。
テレビでも大きく報道され、おかげで影近の名前も一気に広まった。
奥さんのお家の後ろ盾があったから影近は自由に活動ができ、有名にもなれた。
「それでも、唯が」
「ダメ、言わないで」
もう一度唇に手を当てた。
代わってしまったのは影近だけじゃない。
私だって、今は人の子の親。
『人のものをとってはいけません』『人が嫌がることをしてはいけません』毎日のように月に言っている。
その私が、影近の家庭を壊すことはできない。
「僕は、嘘をつきたくない」
はっきりと、まっすぐに私に向けた言葉。
影近らしいなと思う反面、子供のようだなとも思う。
フフフ。
こんなところは月に似ているのかもしれない。
ギュギュッ。
回していた影近の腕に力がこもる。
流されたなんて言葉はいいわけでしかない。
全ては自己責任。
それでも、私は影近の腕を振り払うことができなかった。
あの後、影近はお金持ちの社長令嬢と結婚した。
テレビでも大きく報道され、おかげで影近の名前も一気に広まった。
奥さんのお家の後ろ盾があったから影近は自由に活動ができ、有名にもなれた。
「それでも、唯が」
「ダメ、言わないで」
もう一度唇に手を当てた。
代わってしまったのは影近だけじゃない。
私だって、今は人の子の親。
『人のものをとってはいけません』『人が嫌がることをしてはいけません』毎日のように月に言っている。
その私が、影近の家庭を壊すことはできない。
「僕は、嘘をつきたくない」
はっきりと、まっすぐに私に向けた言葉。
影近らしいなと思う反面、子供のようだなとも思う。
フフフ。
こんなところは月に似ているのかもしれない。
ギュギュッ。
回していた影近の腕に力がこもる。
流されたなんて言葉はいいわけでしかない。
全ては自己責任。
それでも、私は影近の腕を振り払うことができなかった。