大切なあなた

大切な人

「イベントも盛況ですね」
午後から行われるチャリティーコンサートにかかわっている駿が声をかけてきた。

「早いのね」
「ええ、準備もかねて視察です」
「ふーん」

まじめと言うか、仕事人間と言うか、駿らしい。

「家族サービスをしないといけないような子供もいませんしね」
「それは・・・」

そんなにはっきりと言われると、答えに困る。

大学時代、駿は結構モテていた。
優しいし、見た目だって悪くないし、あまりしゃしゃりでる感じでなく控えめなのも女子の間では人気者。
そんな駿には学生時代から付き合っている彼女がいるのも有名な話だった。

「たまの日曜なのに、奥さんもかわいそうね」
「これも仕事ですから」
「そうね」

駿の奥さんは二つ年下の幼馴染。
小さくてかわいらしい人だけれど、体があまり丈夫ではないらしい。
詳しいことはわからないけれど、生まれた時から内臓にいくつかの疾患があり日常生活にもいろいろと制約があると言う。
正直、なぜそんな人を奥さんい選んだんだろうと思ったことが何度かある。
駿ならもっと健康で元気な人がいくらでもいるのに。
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