紫陽花
今朝は、拓実と会うのが嫌だったのでいつもより更に朝早い電車に乗った。昨日は結局1日LINEを既読スルーしてしまった。これでフラれたらやっぱり身体目当てということだ。それならそれで早く終わりにしたい。職場の女性陣に睨まれる事も無くなる。
初めてこの時間の電車に乗ったがいつもより更に混んでいた。端っこに立つ。
今日のtodoリストを作っていると、ふとお尻に違和感があった。後ろの人のカバンが当たっている?
いや、手だ。不快感と恐怖が襲ってくる。美咲はため息を我慢した。また痴漢か…。
大人しそうな外見に大きな胸。今まで何度も被害にあってきた。でも気持ち悪いやら怖いやらでいつも何も声を上げる事はできない。
早く駅に着いて、早く終われと心の中で祈っていると「おい、痴漢。次の駅で降りろ」と聞いたことがある声がした。村上部長だった。男は、俺じゃないやってないアイツが誘ったなど意味不明な言葉を喚いていたが部長が「写真も動画もある。逃げられないからな」と言いながら手を掴むと大人しくなった。次の駅で部長と私と男は降りた。駅員や警察と話が終わる頃には出勤時間ギリギリになっていた。
慌てて「部長!時間が!!急がないと間に合いません!」部長は驚いた顔で「松村、これから出勤する気なのか?」と言った。「当たり前です!!今日はA社の重役が来るので準備の為に早く来たんです」「…その状態で仕事が出来るのか」「どういう意味ですか?」と聞くと、心配そうな顔で「震えてるぞ」と言われて初めて自分の足が震えている事に気付いた。恥ずかしい。「あれ?おかしいですね。いつもの事なのになぁ」と適当にとぼけていると「…いつもだと?」部長が怖い顔で聞いてきた。顔が整っているだけに怒っている顔も綺麗で迫力がある。思わず見惚れていると「アイツはどうした。この事を知っているのか」と言われてハッとした。拓実のことだろう。「いえ、言ってなくて」思わず声が小さくなる。部長は察したのか「今日は休め。俺も休む。」と言いながらスマホを取り出し電話を始めた。美咲が止める隙も無かった。
「俺だ。今日は休む。あぁ。大丈夫だ。あの資料の印刷だけ頼む。すまない。」と言って通話を終える。美咲は思わず「本当に申し訳ありません!部長」と勢い良く頭を下げた。「気にするな。俺も最近残業続きで疲れてるんだ。松村も早く電話しろ。」部長を休ませたのに私が出勤する訳には行かない。
「おはようございます、松村です。ちょっと今日は体調が悪くなってしまって…全て資料等は準備してあるのでデスクの右側の引き出しの1番上に…あ、はい。宜しくお願いします。申し訳ありません。」伝え終わって向こうが切るのを確認してからスマホをしまう。部長が電話する様子じっと見ていた。「本当にすいません…」「松村が謝る必要は無い。悪いのはあの男だからな。」とまた怖い顔をしたが、ふっと優しい眼差しになり「どこか行きたい所ないか?」
思わず「えっ???一緒に行ってくれるんですか」と聞き返してしまった。言葉が出た後になんて厚かましい事を言ってしまったのかと反省して「すいません…」と謝った。部長はキョトンとした顔をしてから「なんで謝るんだ?このままどこかに行こう。最近ストレス溜まってたからな」というと少年のような笑み浮かべた。「私は良いですけど、ほんとうに良いんですか?」と上ずった声で聞き返してしまった。というか、なにその顔!?可愛い!初めて見た!!尊い!!!!思わず心の中のヲタクが出てしまった。部長はいつもの顔に戻り「どこに行くか考えよう。せっかくの休みだからな。とりあえずあそこに入るか」と歩きだしていた。慌てて後ろについて行く。
え、憧れの部長と2人でカフェ!?どうしよう!?!?半ばパニックになりながらも、ワクワクした気持ちを抑えられなかった。
「松村は何が良い?」「ホットコーヒーのブラックが良いです。」「わかった。」駅近ということもあり、朝から少し混んでいた。
私を席に座らせるとカウンターへ向かっていった。後ろ姿を見ていると、フラペチーノとか可愛いものにすれば良かったと思った。いや別に可愛い子ぶる必要もないか。でもブラックって…。あ、お金出さないと!いくらだっけ??財布を出して部長が戻ってくるのを待つ。向かい合ってこれからコーヒーを飲むのかと思うだけで緊張する。目を閉じて深呼吸していると「大丈夫か?」と目の前から声がした。驚いて目を開けると部長と目が合った。あまりのイケメンぶりに思わず「うっ」と変な声が出てしまった。「…どうぞ」とコーヒーを差し出された。変な声は聞こえてなかったらしい。「あ、ありがとうございます。すみません。おいくらでしたか?」部長が「気にするな」と言いながらコーヒーを口にした。「あつっ。」としかめ面をした。
その表情に「猫舌ですか?可愛いですね!」と言ってしまった。部長が睨む。「あ、ごめんなさい。」とすぐに謝ったが、不快な気分にさせてしまったのだろう。私のバカ!!!
と心の中で自分を罵倒していると「可愛いと言われ慣れてないんだ。すまん。」と逆に謝られてしまった。「いえ、こちらこそ‥」
お互い沈黙になる。気まずい、どうしようと考えていると「どこに行こうか。遊園地とかどうだ?」ぶ、部長と遊園地??驚いたのが顔にも出ていたのだろう。「すまない。女性が何処に行ったら気分転換になるのか分からなくてな。」と少しだけ恥ずかしそうに言った。わたし、部長となら何処へでも…と言いかけたがコーヒーを持つ左手の指輪が気になる。
「映画はどうですか?」と提案すると「最近映画館に行ってないな。良さそうな作品があるのか?」すぐにスマホで検索し、「私はコレを観たいです」とスマホの画面を見せた。純愛で泣けると評判の映画だ。「ストーリーの評価が高いです。ヒロインが亡くなるのはベタですが、人より早く年を取る病気と言うところがポイントです。若さを失っていく絶望感が涙を誘う様ですよ!」部長は「わかった。それにしよう。」とすぐに了承してくれた。「近くの映画館はここなので、歩いていきましょう。側に公園があるのでそこで座ってのんびりすれば時間は丁度いいです」と具体的なプランを説明した。
部長は「松村は、やっぱり仕事が出来るな」と少し笑った。「!!ありがとうございます…部長に言われるなんて光栄です。」
本当に嬉しい。
初めてこの時間の電車に乗ったがいつもより更に混んでいた。端っこに立つ。
今日のtodoリストを作っていると、ふとお尻に違和感があった。後ろの人のカバンが当たっている?
いや、手だ。不快感と恐怖が襲ってくる。美咲はため息を我慢した。また痴漢か…。
大人しそうな外見に大きな胸。今まで何度も被害にあってきた。でも気持ち悪いやら怖いやらでいつも何も声を上げる事はできない。
早く駅に着いて、早く終われと心の中で祈っていると「おい、痴漢。次の駅で降りろ」と聞いたことがある声がした。村上部長だった。男は、俺じゃないやってないアイツが誘ったなど意味不明な言葉を喚いていたが部長が「写真も動画もある。逃げられないからな」と言いながら手を掴むと大人しくなった。次の駅で部長と私と男は降りた。駅員や警察と話が終わる頃には出勤時間ギリギリになっていた。
慌てて「部長!時間が!!急がないと間に合いません!」部長は驚いた顔で「松村、これから出勤する気なのか?」と言った。「当たり前です!!今日はA社の重役が来るので準備の為に早く来たんです」「…その状態で仕事が出来るのか」「どういう意味ですか?」と聞くと、心配そうな顔で「震えてるぞ」と言われて初めて自分の足が震えている事に気付いた。恥ずかしい。「あれ?おかしいですね。いつもの事なのになぁ」と適当にとぼけていると「…いつもだと?」部長が怖い顔で聞いてきた。顔が整っているだけに怒っている顔も綺麗で迫力がある。思わず見惚れていると「アイツはどうした。この事を知っているのか」と言われてハッとした。拓実のことだろう。「いえ、言ってなくて」思わず声が小さくなる。部長は察したのか「今日は休め。俺も休む。」と言いながらスマホを取り出し電話を始めた。美咲が止める隙も無かった。
「俺だ。今日は休む。あぁ。大丈夫だ。あの資料の印刷だけ頼む。すまない。」と言って通話を終える。美咲は思わず「本当に申し訳ありません!部長」と勢い良く頭を下げた。「気にするな。俺も最近残業続きで疲れてるんだ。松村も早く電話しろ。」部長を休ませたのに私が出勤する訳には行かない。
「おはようございます、松村です。ちょっと今日は体調が悪くなってしまって…全て資料等は準備してあるのでデスクの右側の引き出しの1番上に…あ、はい。宜しくお願いします。申し訳ありません。」伝え終わって向こうが切るのを確認してからスマホをしまう。部長が電話する様子じっと見ていた。「本当にすいません…」「松村が謝る必要は無い。悪いのはあの男だからな。」とまた怖い顔をしたが、ふっと優しい眼差しになり「どこか行きたい所ないか?」
思わず「えっ???一緒に行ってくれるんですか」と聞き返してしまった。言葉が出た後になんて厚かましい事を言ってしまったのかと反省して「すいません…」と謝った。部長はキョトンとした顔をしてから「なんで謝るんだ?このままどこかに行こう。最近ストレス溜まってたからな」というと少年のような笑み浮かべた。「私は良いですけど、ほんとうに良いんですか?」と上ずった声で聞き返してしまった。というか、なにその顔!?可愛い!初めて見た!!尊い!!!!思わず心の中のヲタクが出てしまった。部長はいつもの顔に戻り「どこに行くか考えよう。せっかくの休みだからな。とりあえずあそこに入るか」と歩きだしていた。慌てて後ろについて行く。
え、憧れの部長と2人でカフェ!?どうしよう!?!?半ばパニックになりながらも、ワクワクした気持ちを抑えられなかった。
「松村は何が良い?」「ホットコーヒーのブラックが良いです。」「わかった。」駅近ということもあり、朝から少し混んでいた。
私を席に座らせるとカウンターへ向かっていった。後ろ姿を見ていると、フラペチーノとか可愛いものにすれば良かったと思った。いや別に可愛い子ぶる必要もないか。でもブラックって…。あ、お金出さないと!いくらだっけ??財布を出して部長が戻ってくるのを待つ。向かい合ってこれからコーヒーを飲むのかと思うだけで緊張する。目を閉じて深呼吸していると「大丈夫か?」と目の前から声がした。驚いて目を開けると部長と目が合った。あまりのイケメンぶりに思わず「うっ」と変な声が出てしまった。「…どうぞ」とコーヒーを差し出された。変な声は聞こえてなかったらしい。「あ、ありがとうございます。すみません。おいくらでしたか?」部長が「気にするな」と言いながらコーヒーを口にした。「あつっ。」としかめ面をした。
その表情に「猫舌ですか?可愛いですね!」と言ってしまった。部長が睨む。「あ、ごめんなさい。」とすぐに謝ったが、不快な気分にさせてしまったのだろう。私のバカ!!!
と心の中で自分を罵倒していると「可愛いと言われ慣れてないんだ。すまん。」と逆に謝られてしまった。「いえ、こちらこそ‥」
お互い沈黙になる。気まずい、どうしようと考えていると「どこに行こうか。遊園地とかどうだ?」ぶ、部長と遊園地??驚いたのが顔にも出ていたのだろう。「すまない。女性が何処に行ったら気分転換になるのか分からなくてな。」と少しだけ恥ずかしそうに言った。わたし、部長となら何処へでも…と言いかけたがコーヒーを持つ左手の指輪が気になる。
「映画はどうですか?」と提案すると「最近映画館に行ってないな。良さそうな作品があるのか?」すぐにスマホで検索し、「私はコレを観たいです」とスマホの画面を見せた。純愛で泣けると評判の映画だ。「ストーリーの評価が高いです。ヒロインが亡くなるのはベタですが、人より早く年を取る病気と言うところがポイントです。若さを失っていく絶望感が涙を誘う様ですよ!」部長は「わかった。それにしよう。」とすぐに了承してくれた。「近くの映画館はここなので、歩いていきましょう。側に公園があるのでそこで座ってのんびりすれば時間は丁度いいです」と具体的なプランを説明した。
部長は「松村は、やっぱり仕事が出来るな」と少し笑った。「!!ありがとうございます…部長に言われるなんて光栄です。」
本当に嬉しい。