明日、きっと別れを告げます
仕事が終わり、大きな溜息が出た。
一体私はどうしたらいいのだろう。

そんなときに限って、たまたま、偶然、会ってしまうのだ。
高野さんに。

お互い電車通勤の私たちは、こうして意図とせず駅でバッタリ出会うことがある。
昨日まではそんな偶然に運命すら感じて心が浮足立っていたというのに。

「真知、お疲れ様」

「……お疲れ様です」

「元気ないけどどうかした？仕事忙しかった？」

いつもとなんら変わらない高野さんは優しく私に話しかけてくる。
いつもなら嬉しいはずなのに、今日は素直に頷けない。

「……疲れちゃったからカフェでも寄ってから帰りませんか？」

「おっ、いいね」

私の提案を高野さんはいつもの調子で同意した。

分岐の駅で途中下車し、駅構内にあるカフェに入る。
ここも私たちのよく利用するお店。

駅で会ってから、何気ない話をしながら数分電車に揺られてここまで来るのに、何度も何度も左手の薬指を確認してしまう。
なかなか見えるタイミングがなくて焦ったけど、結局指輪はついていなかった。
そのことにほっとしている自分がいる。

ほら、指輪なんてしてないじゃない。
きっと思い過ごしなのよ。

そう納得させようとするけれど、どうにも胸がざわざわして仕方がない。

私が好きなカフェオレを頼んでくれて、支払いも済ませ、目の前にカップを置いてくれる。
いつも私を一番に考えて優しくしてくれる高野さん。
自慢の彼氏……。

聞きたい。
結婚してるのかって。
でも。でも。

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