婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
 後は王城に送り届けるだけだと安心していたが、サルジュは授業が終わるとすぐに教室を出ていく。
 慌てて追いかけてどこに向かっているのか聞いてみると、一年生のある生徒が農地のデータをまとめてくれたらしく、それを受け取りに行きたいようだ。
 サルジュは朝からずっと、そのデータの内容に気を取られていたらしい。
 だがそこで、あの事件が起きた。
 第三王子ユリウスが婚約者だったキーダリ侯爵令嬢との婚約を解消し、彼女は学園を退学させられたのだ。
 魔法学園に入学するまでは、訓練として魔法の使用が認められている。だが在学中にその素質を問われ、卒業することができなければ、魔力を封じられてしまう。そうなってしまえば魔法を使うことができないだけではなく、貴族として生きる道も閉ざされる。
 もうキーダリ侯爵令嬢は家を出るか、修道女になるしかないだろう。
 そうなっても仕方がないと思えるほど、彼女のしたことは悪質だった。
 サルジュの研究に協力していた女子生徒の私物を中庭の噴水の中に投げ捨て、それを他人のせいにして、偽の証言を強要したのだ。他のクラスメイト達も今回は厳重注意で終わるだろうが、ここがただの学園ではなく、貴族としての素質が問われる場所だということを思い知っただろう。
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