婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
何度目かに会ったあとそう声をかけると、マリーエは驚いたように目を見開き、それから白皙の肌を赤く染めて俯いた。
「い、いえ。ユリウス殿下にお言葉を賜るほどのことではございません。アメリアさんはわたくしの友人ですので」
いつもの凛とした彼女とは違って、囁くような小さな声でそう言うと、少しだけ沈黙した。それから思い切ったように顔を上げる。
「あの、ユリウス殿下が覚えていらっしゃるかどうかはわからないのですが、ずっとお礼を申し上げたいと思っていたことがありました」
「礼?」
首を傾げるユリウスに、マリーエはこくりと頷く。
「入学したばかりの頃、ユリウス殿下に助けていただいたことがあります。わたくしは先生に、用事のない場合は他のクラスに訪問することをなるべく避けたほうがいいのではないかと相談したのですが……」
「ああ、覚えている」
ユリウスがそう言うと、マリーエは嬉しそうに笑う。
その笑顔は、いつもの隙のない完璧な姿とは大きくかけ離れた無邪気なものだった。今までどんなに美しい令嬢から微笑みかけられても何とも思わなかったのに、それを見た途端に胸がどきりとした。
「あのとき、セイラさんだけではなく色々な人達から余計なことをしたと責められていたのです。ですが、ユリウス殿下がご自分の指示だと仰ってくださったので、わたくしを責める人はいなくなりました。本当にありがとうございました」
「い、いえ。ユリウス殿下にお言葉を賜るほどのことではございません。アメリアさんはわたくしの友人ですので」
いつもの凛とした彼女とは違って、囁くような小さな声でそう言うと、少しだけ沈黙した。それから思い切ったように顔を上げる。
「あの、ユリウス殿下が覚えていらっしゃるかどうかはわからないのですが、ずっとお礼を申し上げたいと思っていたことがありました」
「礼?」
首を傾げるユリウスに、マリーエはこくりと頷く。
「入学したばかりの頃、ユリウス殿下に助けていただいたことがあります。わたくしは先生に、用事のない場合は他のクラスに訪問することをなるべく避けたほうがいいのではないかと相談したのですが……」
「ああ、覚えている」
ユリウスがそう言うと、マリーエは嬉しそうに笑う。
その笑顔は、いつもの隙のない完璧な姿とは大きくかけ離れた無邪気なものだった。今までどんなに美しい令嬢から微笑みかけられても何とも思わなかったのに、それを見た途端に胸がどきりとした。
「あのとき、セイラさんだけではなく色々な人達から余計なことをしたと責められていたのです。ですが、ユリウス殿下がご自分の指示だと仰ってくださったので、わたくしを責める人はいなくなりました。本当にありがとうございました」