婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
「マリーエ嬢は?」
「えっ」
 最近よく顔を合わせている令嬢の名前を出されて、思わず声を上げる。
「どこの令嬢だ?」
「エドーリ伯爵家の令嬢で、アメリアの友人だ」
 サルジュがそう答えると、アレクシスは大きく頷く。
 アメリアは何度も王城を訪問していて、今では兄弟全員と面識がある。
「なるほど。エドーリ伯爵家か。婚約者もいないようだな。アメリア嬢と親しいのなら、悪い子ではなさそうだ」
 アレクシスの言葉に、エストも同意した。
「そうですね。エドーリ伯爵も家族を大切にする人だと聞いています。権力に固執しないところも好ましい」
「ま、待ってくれ。急にそんなことを言われても、彼女とは……」
 そう言いかけて、我に返る。
 マリーエとの関係を、どんな言葉で表現すればいいのだろう。
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