婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
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 エドーリ伯爵家の第二子として生まれたマリーエは、早くに母を亡くし、三歳年上の兄と二歳年下の弟。そして父と暮らしてきた。
 父と兄は穏やかで弟も大人しい性格だったから、家族を引っ張るのはいつもマリーエだった。そのためか、間違っていると思ったらはっきりと言ってしまう、令嬢らしからぬ性格になってしまったのかもしれない。
 十六歳になって王立魔法学園に入学して早々、マリーエはクラスメイトから距離を置かれていた。
 あまりにも他の生徒がマリーエのいる教室に集まるものだから、それを制限してほしいと教師に告げてしまったのだ。それが一部の生徒の反感を買い、他のクラスメイトも面倒ごとに巻き込まれるのを嫌って、マリーエにはよそよそしい態度になっている。
 生徒が集まっていた原因は、同じクラスにいる第四王子サルジュだったようだ。たしかに彼を初めて見たときは、思わず目を奪われた。
 だが彼に関することであれば、マリーエが口を出さずともじきに王家の方で対策をしていたと思われる。実際に教室を訪れた第三王子のユリアンは、マリーエが教師に告げた内容を自分の指示だと言っていた。
 彼がそう言った途端、マリーエに嫌味を言う人間がいなくなった。
 マリーエに文句を言えば、同じことを指示したユリアンに文句を言っているのも同じことだ。
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