婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
 噂話や、互いに褒め称え合う話ばかりしている他のクラスメイト達を見ると、くだらないことをしていないでもっと魔法の勉強をしたほうがいいと言いたくなってしまう。
(だからといって、サルジュ殿下やアメリアさんは、少しやりすぎよね)
 午後の授業どころか閉校の時間になっても気付かずに、熱心に研究をしているふたりを図書室で見つけて、思わず溜息をつきそうになる。
「もう閉校の時間になりましたよ」
 そう言って、やや強引にふたりを帰らせ、自分も帰ろうとしていたときにユリウスと遭遇した。
 彼もまた同じ目的でここを訪れたようだ。
「ユリウス殿下」
 マリーエは彼に挨拶をしたあと、ふたりがきちんと帰ったことを報告する。
「ああ、ありがとう。助かったよ」
 ユリウスは柔らかく笑って、そう言ってくれた。
 彼はとても家族想いである。さらに公明正大で、人の上に立つのにふさわしい人間だ。
 そんなユリウスが、じっとマリーエを見つめている。いつもの彼にはあまり似つかわしくない、迷いを含む視線が気になった。
「あの、ユリウス殿下?」
「ああ、すまない。少し考え事をしていた」
< 344 / 355 >

この作品をシェア

pagetop