離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
五つ年上の三十一歳だと聞いているが、もっと若くも見え、一方で堂々としているせいかもっと年上のような気もする不思議な人だった。


「初めまして。津田(つだ)です。どうぞ」
「失礼します」


お腹の前で手を合わせて軽く会釈した私は、緊張で震える足を前に出して進む。

すると津田さんは私のところまでやってきて「こちらです」と席へとエスコートしてくれた。

スマートな人なんだな。

父の転勤で私も海外に滞在していた経験があり、欧米の男性が女性をエスコートする姿をあたり前のように見てきた。

けれども日本ではなかなか見られず、ドアを開けて自分が先に入ってしまうような男性も珍しくはないのに。

仲居に目配せした彼は、私が腰を下ろすと座卓を挟んだ向かいの席に座り、じっと見つめてくる。


「あっ、申し遅れました。月……竹内春奈(たけうちはるな)です」

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