離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
「わかりました」


そう答えた瞬間、頬を緩ませた津田さんが私の手を握るのでビクッとしてしまった。


「ありがとう。でも夫婦になるんだから、これくらいのスキンシップでおどおどされては困るな」

「……はい」


そう言われても、愛を育んできたわけではなく、つい数秒前に結婚を承諾しただけなのだし。


「月島さん、下の名前は?」
「蛍です」
「それじゃあ、蛍」


いきなり呼び捨てされて、心臓の音がうるさくなる。

いや、夫婦になるのだから平然と受け入れなくては。


「はい」
「あははは。引きつってるよ」


白い歯を見せる津田さんは、私の頬をトントンと指でつついた。


「す、すみません」


この人、千里眼でも持っているのかしら。
隠しごとなんてできそうにない。


「謝らなくても。俺は直秀」
「はい、先ほどお聞きしました」
「うん。そうじゃなくて、催促してるつもりなんだけど」
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