離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
院内教室の朝は、ここに通っている子供たちの様子を看護師に確認することから始まる。

申し送りの終わった夜勤のリーダーナースから電話が入り、院内学級の教師がそれを聞くのだ。


大体電話を受けるのは喜多川(きたがわ)先生。

四十代後半の彼はここあおぞら教室の責任者で、奥さん思いの優しい人だ。

少し垂れ目で優しさがにじみ出ているような顔は、子供たちを和ませるのに効果てきめん。

彼がにこっと笑うと、初めてここを訪れる子供たちの緊張も緩む。

ただ、優しいだけでなくよくないときはビシッと叱れる、メリハリのきいた理想的な先生で、私の目標でもある。


そんな喜多川先生が引っ張るあおぞら教室は、短期利用の生徒も含めて、月に平均で十数名ほど在籍することが多く、私は小学生の担当だ。

とはいえ、先生も生徒も担当は関係なしに入り乱れて雑談もするし、全員が参加して行う行事もあるため、どの生徒とも顔見知りではある。


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