離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
通常の学校ではありえないようなやり取りだが、教師の中で一番若く、特に高校生とは歳も近い私は、友人のような役割を果たしている。

時々恋愛相談もしたりするのだ。

真奈香ちゃんも好きな男の子がいて、よく話を聞いている。


「それで、ちゃんと検温してきた?」
「逃げてきた」


笑顔でサラッと言う彼女だけれど、一瞬瞳の奥が曇ったのが気になる。

なにかあったのだと察した私は、戻りなさいとは言わないことにした。


「それはまずい。私、共犯じゃない」

「あはは。そう、共犯。もー、ほんと、蛍ちゃんのそういうとこ好き」


彼女も私が叱らないことに気づいたようだ。

ここあおぞら教室では、子供たちのエネルギーを決して削(そ)がないように気をつけている。

ただでさえつらい治療に挑んでいるのに、ここに来たら余計に疲れるようでは困るのだ。

私は彼女の隣に座った。


「毎日同じことの繰り返しだもんね。疲れるよね」

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