離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
しかもその結果に一喜一憂している彼女たちにしてみれば、疲れるどころの騒ぎではない。
その日の検温や回診で新たな治療をオンされることもあるのだから、憂鬱な時間なのだろう。
「疲れるっていうかさ……」
真奈香ちゃんはうつろな目をしてそれきり黙り込んでしまった。
こういうときは余計なことを言わないほうがいい。
彼女の心の整理がつくのを隣で見守るだけだ。
「で、蛍ちゃんの彼氏の話は?どんな人?」
いきなり話を変えた彼女は、まだぎこちないものの少し笑顔が戻ってきた。
たった数分ではあるけれど、気持ちを切り変えつつあるのだ。
ここに入院している子供たちの中には、退院してもまた戻ってくる子も多い。
苦しい治療に耐えてようやく手に入れた日常生活をすぐに手放さなくてはならなくなる無念さは、しっかり受け止めなければならない。
真奈香ちゃんもそのうちのひとりで、入退院を繰り返している。