離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
「そんなの内緒だよ」
「ダーメ。告白されたの? 教えなさいよー」


彼女は私の肩を揺さぶって茶化してくる。


「ほかの先生には内緒だからね」
「了解」


私は彼女と顔を突き合わせて小声で話し始めた。


「お見合いして婚約したの」


バン!と思いきり肩を叩かれて、目が飛び出そうになる。


「婚約って、やるじゃん。……私もいつか結婚できるのかな?」


白い歯を見せた彼女は一転、苦しげな表情を浮かべた。

ここには、今を生きるのが精いっぱいで将来の希望を見いだせない子もたくさんいるのだ。


「できるよ。だって、この私が婚約したんだよ?」
「めっちゃ説得力ある!」
「失礼ね!」


私は彼女たちを気遣った嘘はつかないようにしている。

嘘だとばれたときに、せっかく築いてきた信頼関係を失う可能性があるからだ。

ただ、契約結婚であることはどうしても言えなかった。


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