離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
中、高校生の授業は主に喜多川先生が担当しているのだが、彼もあえて今朝の話題には触れていない。

待ち望んでいた退院が延期になり、どうしようもなく悲しくて悔しい感情を持て余していた彼女は、泣き叫ぶこともできずここに来て気持ちを落ち着けたのだろう。

真奈香ちゃんは患者としては優等生で、ドクターやナース、それに両親を困らせるようなことは決して言わない。

ただ私はそれを心配している。

周囲の子たちは青春真っ盛りなのに彼女が焦らないわけがなく、どれだけ感情を殺して生きているのかと思うと、胸が痛いのだ。

だから、あおぞら教室ではできるだけ素の彼女でいられるようにしたい。



午前中の授業を終えたあと、午後は別の先生にお願いして、私は病棟に向かった。

博物館への遠足を楽しみにしていたのにドクターストップがかかった、小学校三年生の幸平(こうへい)くんに会いに行くのだ。

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