特等席〜私だけが知っている彼〜2

記者の質問に対し、五十鈴はどこかうんざりしたような顔で返事をしている。よく眠れていないのか目の下には隈ができており、椿芽の胸には心配が溢れていく。

「五十鈴くん……」

きっと撮影の合間にも記者に質問攻めにあっているのだろう。心愛と言っていることが食い違っているため、記者の勢いも尋常ではない。

『もういい加減、認めてくださいよ！心愛さんが可哀想です』

『だから！付き合ってないんです！』

しつこい記者の言葉に五十鈴が苛立ち、声を荒げる。そして、部屋に入ってきた記者を無理矢理外に追い出したところで映像は終了した。

「私、どうしたらいいんだろう……」

テレビを見つめながら椿芽は考える。五十鈴が一般人である椿芽と付き合っているということは、Roseのメンバーたちと冬子しか知らない。恋人という関係を守り続けてこれたのは、五十鈴が外に行く時には変装をしてくれていたからだ。

「ずっと、守られてばかりだったんだね」