特等席〜私だけが知っている彼〜2
この秘密の関係も、少し前に盗撮写真が送られてきた時にも、五十鈴は椿芽のそばにいてくれた。それなのに、五十鈴が苦しんでいる時に椿芽は寄り添えていない。

ただ時間だけが過ぎていく中、玄関のチャイムが鳴り響く。椿芽が五十鈴のことを考えながらドアを開けると、目の前にいた人物に驚いて言葉を失ってしまう。

「こんばんは〜。ここが、私のダーリンのお家なのね」

高級ブランドのかばんを手にし、フリルやリボンのついたまるでフランス人形のような可愛らしいワンピースを着た心愛が立っている。メガネと帽子で軽く変装しているものの、椿芽は一目見てわかってしまった。

「……何か、ご用ですか?」

バクバクと緊張から心拍数が早くなる。椿芽が何とか言葉を発すると、心愛は椿芽をジロジロと見つめ、見下すような目を向けた。

「五十鈴くんが付き合ってる女ってどんな人なのか気になってたんだけど、こんなショボい女だったんだ。こんな女と並ぶより、私と一緒にいた方が五十鈴くんは幸せになれるに決まってるわ!」
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