特等席〜私だけが知っている彼〜2
椿芽がそう答えると、冬子は「それ、本気で言っているの?」と呆れたような声を出す。

「世間の目なんて、そんなもの恋愛に関係あるの?確かにあなたよりも心愛の方が社会的地位も高くて、容姿もいいのかもしれない。だけど五十鈴は?あなたと別れて幸せになれると本気で思ってる?あなただって、五十鈴と別れたくないんでしょ?」

「そ、それは……」

冬子はしゃがみ込み、椿芽の両頬を自身の両手で包んで目線を合わせる。冬子の顔は真剣そのものだった。

「時間は待ってはくれないの。あの女、五十鈴と共に交際会見を開くそうよ。今日の夕方六時に××ホテルでね。会見が開かれたら、もう五十鈴はあの女のものになってしまうわ。あの女の所属している事務所はうちよりも大手で、逆らえないから」

「そんな……!」

心愛のものに五十鈴がなってしまえば、もう二度と椿芽は彼に触れることはできなくなる。こんなにも大好きな五十鈴を、画面越しでしか見れなくなってしまう。そう思うと、色々な感情で体が震えた。
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