Butler and Isla
ドアの外から声をかけてきたのはノエである。メイドが応える前に、ジュリエットは立ち上がっていた。

「もう大丈夫よ」

ジュリエットがそう言い部屋のドアを開けると、ドアの前にいたノエの頬が一瞬にして赤く染まっていく。その目はジッとジュリエットを見つめていた。

「何だか、照れ臭いわね。似合ってるかしら?」

「はい……!とてもお美しいです。まるで、おとぎ話に登場する女神様のようです」

ノエに褒められ、ジュリエットの胸の中がくすぐったさを覚える。だが、メイドたちに褒めてもらった時よりもノエの言葉は特別で、誰よりも嬉しい。

「参りましょうか、ジュリエットお嬢様」

「ありがとう、ノエ」

ノエに手を差し出され、ジュリエットはその手をゆっくりと取る。手袋越しに伝わってくる温もりに、ジュリエットの顔に自然と笑みが浮かぶ。

(このまま、昨日の夜みたいに二人きりで踊れたら……)

真剣な顔をしながら歩くノエを見て、ジュリエットはそう夢を見てしまう。だが、パーティーホールの前で立っていた父親の言葉が現実へと引き戻した。
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