Butler and Isla
「ノエ、ここからは私が変わろう。ジュリエット、今日は数多くの名家のご子息がお集まりだ。失礼のないように」

「……はい」

ノエと手がゆっくりと離れていく。チラリとジュリエットがノエの方を見ると、彼から表情は抜け落ちており、心の内側で何を考えているのか読み取ることはできなかった。

父親に手を掴まれ、その強さにジュリエットは顔を顰める。ノエは、まるでガラス細工を扱うかのように優しく触れてくれたが、父親は力任せに握るので貼り付けようとした笑みが崩れてしまう。

だが父親はそれにも気付かず、パーティーホールのドアを開ける。豪華絢爛なパーティーホールには、華やかな着飾った人々が集まっている。その数はざっと見て二百人は超えており、昨夜は広く思えたパーティーホールが少し狭く感じてしまう。

「とても綺麗な方ね……」

「ダプシェ家の一人娘……。病弱で表舞台に姿をずっと見せていなかったけど、予想以上の美しさだ……」

「綺麗な目ね……。宝石みたい」

「ダンス、誘おうかな」
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