Butler and Isla

今夜のパーティーに招待され、談笑をしていた招待客たちは、ジュリエットがパーティーホールに入った瞬間に彼女に視線が集まる。人の視線にジュリエットが一瞬怯むと、一人の男性が近付いてくる。

「ジュリエット様、私と一曲踊っていただけませんか？」

燕尾服を着た栗色の美しい髪の男性がお辞儀をし、名前を名乗る。彼の名前はケイ・アイスバーク。アイスバーク家はダプシェ家と肩を並べるほどの名家だ。

瞳を輝かせ、手を差し出してくるケイの顔立ちは整っており、周りにいる女性たちが頰を赤く染めて羨望の眼差しを向けてくる。だが、ジュリエットはその手をなかなか取ることができない。

「ジュリエット、緊張しているのはわかるが、ケイ様を困らせているぞ」

父親に声をかけられ、ジュリエットの肩を掴む。顔を上げれば、父親に鋭い目を向けられた。アイスバーク家のご子息と関係を持て、と命令されているような気がする。

「……申し訳ありません。ケイ様、私と一曲踊っていただけませんか？」