Butler and Isla
ジュリエットがそう言うと、父親は満足したような顔で離れていく。ケイに手を取られ、ジュリエットはパーティーホールの中央へと移動する。

音楽が奏でられ、ジュリエットは相手に合わせて踊り出す。腰に回された腕も、ジュリエットの手が触れている肩も、ノエのものとは全く違う。

「ジュリエット様、ダンスがとてもお上手ですね。こんなにうまく踊れる相手と出会ったのはあなたが初めてです」

目をギラつかせながらケイが言う。その目はジュリエットではなく、ダプシェ家を見ているのだとすぐにわかった。それがわかった刹那、ジュリエットの中にあった虚しさはさらに大きくなっていく。だが、それに気付く者は誰もいない。

華やかなデビュタントが成功した後、ケイに気に入られたジュリエットは、文通をすることを強制されることになってしまった。



デビュタントから早数週間、ノエが淹れてくれた紅茶とケーキをジュリエットは楽しむ。窮屈な毎日の中で、落ち着くことを唯一許される時間だ。

「ノエの淹れてくれる紅茶はおいしいわ」

「ありがとうございます」
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