Butler and Isla

ノエがニコリと微笑み、ジュリエットも作り笑いではなく心からの笑みを向ける。すると、「ジュリエットお嬢様」とメイドが声をかけてきた。その手には手紙がある。

「ケイ様からお手紙です」

ケイの名前を聞いた刹那、ジュリエットの顔から笑みが消えそうになる。だが、メイドはニコニコと笑っていた。

「今週に入って三通目ですね。ケイ様、とてもジュリエットお嬢様を想っていらっしゃるのですね」

「……手紙、持ってきてくれてありがとう」

ジュリエットはメイドから手紙を受け取り、封を開ける。そこに書かれていたのは、仕事であったこと、そして趣味である乗馬と狩りの話だった。貴族によくある自慢話である。

ケイと仲睦まじく手紙のやり取りをしているとみんな思っているが、実際は違うのだ。手紙のやり取りなど、周りに仲のいいことをアピールしているだけに過ぎない。

（このお方は、本当に私ではなくダプシェ家を見ているのね……）