Butler and Isla
魔法を解いて
ノエと初めて出会い、恋に落ちた瞬間を思い出してしまい、ジュリエットーーーいやアイラはニコリと微笑む。

あの時ノエと出会い、ノエが専属の執事となってくれたから、アイラはジュリエット・ダプシェを演じることができた。社交ダンスや礼儀作法、勉強に裁縫も頑張れたのである。

「ノエ、今は何時?」

「午前二時を過ぎた頃です」

夜が明ければ、ケイとの結婚式が待っている。祭壇の前で永遠を誓ってしまえば、もう戻ることはできない。

貴族として生まれていれば、いい家に嫁げることに喜びでいっぱいになっていたかもしれない。執事に恋心を抱くこともなかったかもしれない。だが、アイラは思う。

(きっと、私はお嬢様として生まれていても、ノエを好きになっていたわ)

アイスバーク家に嫁げば、一生遊んで暮らすことができるだろう。美しい宝石も、ドレスも、何だって手に入れることができる。

(だけど、私がほしいものはたった一つだけ……)
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