Butler and Isla
アイラはノエとの距離をグッと詰める。「お嬢様?」と顔を赤く染めながら後ろに下がろうとするノエの襟元を掴み、グッと自分の方へと引き寄せ、アイラは背伸びをする。ふわりと互いの唇が触れた。

「お嬢様、何を……!」

ノエは唇に触れながら後ずさる。その様子を、アイラは胸を高鳴らせながら見つめる。好きな人とするキスは特別なのだという恋愛小説のお決まりの文章の意味が、今はっきりと理解できた。

「ねえノエ、私が一番ほしいものって何かわかる?」

「えっ……アイラ様のほしいものですか?」

ノエは顎に手を当て、一生懸命考え始める。そして、ドレスや靴など思いつくものを言っていくものの、アイラは「違うわ」と笑いながら言う。

「私がほしいのはね、豪華なドレスや宝石なんかじゃない。それよりももっと大切で、お金じゃ買えないものよ」

「それは……」

もう一度唇が触れる。恥ずかしそうに唇に手を当てるノエに、アイラは微笑みながらノエの手に触れる。
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