Butler and Isla
「私がほしいのはノエ、あなたよ。愛するあなたと遠いところで暮らしたい。宝石もドレスもいらない。あなたさえいればいいの」

「アイラ様……」

ノエは迷うような目をする。アイラはその目に涙を浮かべ、彼に抱き着いた。

「私を攫ってよ、ノエ。ジュリエットは嫌い。自分の恋を叶えられないなんて、こんなの嫌なの」

アイラが読んだ小説の中に出てくるジュリエットは、愛する人と結ばれることはできず、その命を捨ててしまった。この愛は悲しい結末にしたくない、いけないとわかっていてもそう思ってしまうのだ。

「なら、俺が魔法を解いてあげよう。あなたはもう自由にどこにでも行くことができて、愛する人と永遠にいられる」

お望み通り俺があなたを攫う、そうノエは言った後にアイラの顎を優しく持ち上げてキスをする。アイラに触れる手は優しいものの、キスはどこか荒々しい。唇を貪られ、アイラの頭は幸せからクラリと揺れる。

「あの男より、アイラのことを愛して幸せにすると誓う。だから、俺のそばから離れないでほしい……!」
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