Butler and Isla
ノエと話していると、沈んでいたジュリエットの心も先程のことが嘘のように色付いていく。他の使用人の時はこうはならない。ノエだけは特別なのだ。

(だって、私は彼のことをーーー)

優しく微笑むノエを見て、ジュリエットの頬が赤く染まっていく。ようやく顔に作ったものではなく、本当の笑みが浮かぶ。だがそれも、数秒後に崩れてしまった。

「明日はジュリエットお嬢様の晴れ舞台ですから、我々は全力でご準備致します」

ノエは、穢れ一つない子どものような笑顔で言う。だがそれは、ジュリエットの心を深く抉ってしまうのだ。

「あ、ありがとう……」

俯いたジュリエットを見て、ノエの表情からも笑顔が消えた。



デビュタント前日のため、昼間の屋敷は多くの使用人が準備をするために忙しなく行き来し、パーティーホールの掃除や料理の食材の調達などがされている。

ジュリエットも今日はいつも以上に忙しい日となった。デビュタント前日のため、ダンスや礼儀作法を教える先生はいつも以上に厳しく、やっとレッスンが終わったと思うと次はメイドたちに捕まってしまう。
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