Butler and Isla
美しく飾り立てられ、人形のように微笑みを浮かべさせられ、デビュタントを成功させ、親同士が決めた結婚相手の元へと贈られる。貴族の娘に自由などない。一生籠の中で暮らさなくてはならないのだ。

(ダメよね、こんなこと考えてちゃ……。私の人生はあの時に捨てたんだから……)

ジュリエットは唇を噛み締め、乱れそうになる呼吸を整えた。



ようやくジュリエットが解放された夜、重いドレスからネグリジェに着替えさせられ、疲れた体を休めるために天蓋付きのベッドに横になっていた。だが、いつまで経っても眠ることができない。

「……」

眠れない時に眠ろうと横になっていても眠れないと聞いたことがあるため、ジュリエットはベッドから起き上がる。そして、明日デビュタントが行われるパーティーホールへと向かっていた。

昼間とは打って変わって屋敷は誰もが寝ているため、静まり返っている。暗闇に包まれた廊下はどこか不気味なのだが、ジュリエットは少しも恐怖を感じることはなかった。
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