Butler and Isla
廊下を足音を立てないように歩き、廊下の奥にある重い扉をゆっくりと開ける。パーティーホールは数百人もの人が入れるようとても広く、明日のデビュタントに向けて既に飾り付けなどが済まされていた。

壁には父親がコレクションしている絵画が飾られ、天井に吊るされた豪華なシャンデリアは月明かりに照らされている。大きな花瓶には美しいバラの花が飾られ、床も綺麗に磨かれている。

明日のジュリエットの晴れ舞台のために、大勢の使用人たちが用意をしてくれた。だが、ジュリエットは喜ぶことができずにその場に座り込む。

「……明日なんて、来なければいいのに」

デビュタントが終わってしまえば、次にジュリエットに待っているのはリボンをつけられて初めて会う人の妻となるだけだ。自由が許されない、心を捨てろ、そう言われてもジュリエットの心は自由を求めている。何故ならーーー。

「誰かいるのですか？」

ジュリエットの瞳に涙が浮かんだ時、パーティーホールのドアが開く。そこにいたのは、火のついた蝋燭を持ったノエだった。パジャマではなく、まだ執事服を着ている。
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