エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
ふたりの想い
夫からの電話に澄夏は動揺を隠せなかった。
(一哉さんが明日こちらに来るなんて)
想定外の事態に、澄夏は酷く動揺していた。
彼がゴールデンウイークに休みを取れることは知っていたが、こちらに来るとは思っていなかったのだ。
澄夏が不在なら真咲に気兼ねなく会える。それこそ旅行にだって行ける貴重な期間なのに。
(もしかしたらお義父さまに呼ばれたのかな)
父はまだ須和家に連絡をしていない様子だし、待ちわびて一哉をけしかけるのかもしれない。
今後についてはなにも話し合わないままこちらに戻ってきたけれど、夫と離れて半月以上経ち、今は澄夏の心も多少は安定してきている。
(今なら冷静に話せそう)
この半月の間、実家で暮らして父が心身ともに弱っているのを実感した。
表向き弱音を吐いている訳ではないのだけれど、喪失感に苛まれている様子をひしひしと感じる。
これまで仕事をなによりも優先して生きてきた父だから、役目が無くなったからといって急に切り替えることが出来ないように見える。
自分の存在意義が分からなくなって塞いでいる。母も似たようなもので、そんな状況のふたりに一哉との離婚を相談する訳にはいかないから話していないが、以前父が言っていたように離婚には反対するだろう。
離婚の話し合いの為の別居と言っても、実家に戻るのは受け入れられないはず。だから澄夏はどこかに部屋を借りて独立するつもりでいる。
仕事を見つけて生活費を自分で稼ぐつもりだ。