エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
初めて来たのだろう、さりげなく店内をぐるりと見回してから近づいてくる。

目が合うと、彼は少し気まずそうな笑みを浮かべた。

「おはようございます。早い時間に来て貰ってごめんなさい」

澄夏から声をかけると、一哉は「大丈夫だ」と言い椅子を引く。テーブルを挟んで向き合う形になった。

「コーヒーをお願いしてあるけど、他にもなにか頼みますか?」

「いや、とりあえずコーヒーでいい。ここは澄夏の知り合いの店なのか?」

「オーナーが知り合いという訳じゃないけど、オープンのときに私の友人が関わっていて、それで通うようになったんです」

聞かれたことに応えた澄夏に、一哉が眉をひそめる。

「どうして敬語なんだ?」

「あ、そういえば……久しぶりに会ったからかもしれない」

一哉にはそう言ったけれど、実際は彼との別れを意識しているからだ。どうしても距離を置いてしまう。

澄夏は運ばれてきたコーヒーをゆっくり口に運びながらタイミングを伺っていた。

いつどうやって言い出すのがいいのか迷ったからだ。

(やっぱりストレートに言うしかないか)

「あの、一哉さん」

「どうした?」

彼が怪訝な顔をする。
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