エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
彼は優しいから、一度妻になった相手を簡単には突き放せないのだろうか。

「澄夏を心配しているけど、それだけじゃない」

「だったら、どうして……」

彼の気持ちが分らなくて、澄夏は戸惑った。一哉はそんな澄夏から目を逸らさない。

「決まってるだろ? 澄夏を愛しているからだ」

耳に届いた言葉に、澄夏は息が止まるような激しい衝撃を受けた。

だってこれ程予想外のセリフがあるだろうか。

(一哉さんが私を愛してる? まさか……)

「信じられないって顔をしているな」

まるで気持ちを読んだように一哉が言った。

「だって、今までそんなふうに言われたことが無かったから」

澄夏は直ぐ向けられる彼の視線から逃げるように目を伏せた。

「態度では表していたつもりだけど、伝わってなかったか?」

「わ、分からなかった。一哉さんは優しかったけど、義務のような感じだと思ってたから」

(本当に私のことを愛してくれているの? でも南雲さんと付き合ってるんじゃないの?)

澄夏の勝手な思い込みや、勘違いではない。南雲真咲本人が一哉との付き合いを宣言していたのだから。
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